被保険者証が不要になる?(緊急提言)

2019.10.27

 マイナンバーカードの普及と利便性の向上と銘打って、マイナンバーカードの提示だけで医療機関を受診できる仕組みができようとしている。

 

これまでは、公的な医療保険(健康保険または国民健康保険)を利用するには、医療機関の窓口で被保険者証を提示することが不可欠であったが、それを簡略化してマイナンバーカードだけを提示すれば済むようにするとのことである。

 

もちろん、医療保険は受診した医療の費用を支払う制度である。その要した費用は利用した「保険医療機関」から利用者の所属する「保険者」(健康保険組合や市区町村)に対して請求され、査定の上、支払われることとなる。その利用者(患者)の所属する「保険者」はどこかが特定されなければならないわけである。今までは、受診のつど提示していた「被保険者証」には保険者名・保険者番号が記載されていたわけであるがこれからどうなるのか。聞けば、保険者からあらかじめ支払い代行機関である「社会保険診療報酬支払基金」に「マイナンバーを変換した機関別符号(保険)付きで所属被保険者一覧」が提出されており、医療機関の窓口から情報提供ネットワークシステムを通じて、保険者特定がされるとのことである。 

 

幾つかの懸念がある。 

1 被保険者証は保険者と被保険者と医療機関の三者を結ぶ基本的絆の証である。それぞれの強固な権利・義務関係として組み立てられてきたものである。それが、代行機関である「支払基金」の突合作業に取って代われるのか。社会保険の精神である「連帯」が「符牒合わせ」になっていないか。

 

2 社会保険は、皆が自ら「保険料」を出し合って「相互共済」を図ろうとするものである。定められた保険料が支払われなければ有資格の被保険者とはせず、保険料納付義務を果たさなければ給付なしの精神は厳格である。その資格確認は支払い代行で使われた記録との突合だけで十分なのか。

 

3 そもそも保険医療機関が医療(保険医療)を提供する義務を負うのは、保険者との契約関係にあるからであり、診療費用を支払うのは契約上の履行義務があるからでそれを確定するのが被保険者証の被保険者による提示であったはずだ。それが、法律行為か疑わしい「突合」で辻褄が合わされるのは釈然としない。

 

4 マイナンバーカードは日本国民の証明ではあっても、社会保険たる医療保険の資格証明ではない。日本国民であっても医療保険の受給資格を持たないものもあるのです。

 

5 被保険者証の交付義務(被保険者資格確認のための必須義務)を手放す「保険者」とはなんなのか。

 

本気で「保険者機能強化」が求められる。スローガンでなく、新規の保険者業務の実行である。何もせずに放置すればいよいよ「保険者不要論」になろう。 

保険者のない社会保険はなく、国民皆保険もない。 

 

< どうしてもマイナンバー利用促進(被保険者証の窓口 

提示の廃止)に進むなら次の2項目を提案したい > 

 第一 被保険者資格登録機構(センター)の設置

 

    ・保険者業務の共同実施事業として組み立てる。 

    ・保険者業務として、被保険者(家族受給者を含む)搭載原簿の保持。確認、修正、アップデート。これらについての保険者間の統一的業務処理の実行担保 

    ・支払基金内に設置することも可能。ただし、請求・支払いの代行業務とは別で独立性は担保されなければならない。 

    ・組織、運営は簡素なものにする。

 

 第二 保険者は次の業務を新しく実施する。

 

  社会保険精神高揚事業として、毎年保険料納付状況、保険給付受給状況を各被保険者ごとに作成して被保険者に通知する。 

  予防保健事業(予防給付を含む)の本格実施。研究でなく被保険者の生活習慣の変更改善を願った事業実行とする。 

  要する費用は高齢者医療拠出金の拠出基準の変更(別途案参照)により調達。当面1000億円目途。