私の思い

  (懇話会発足のあいさつに代えて)

                                        

           会長 阿部 正俊

                 2018.11.30

   年の瀬が近くなると恒例になっているものの一つに、国の予算編成方針作成があります。その際、判で押したよう世論調査の一番か二番に定着している「社会保障の改革」が課題として提示されます。しかし、何をどう改革するのか、その具体的内容はもちろん、視点と方向性すら提示されたことはありませんでした。(一般的、抽象的に課題の検討を羅列したものは山ほどあります。いわゆる税と社会保障の一体改革として示されたものなどはその典型でしょう) 

そして最後は、財政制度審議会あたりで「社会保障費の増加を5000億円以内に抑える」などの対応策が示され厚生労働省と財務省との「攻防」への道が作られる。果たして、そんな「国庫負担増加抑制論」でお茶を濁していていいのでしょうか。 

 確かに、社会保障経費は国の一般会計予算の3分の1を占め他の費目を抑えて拡大を続けており(下図参照)、とにかく「抑えたい」との気分はわからないでもありません。しかし、先々こんな「機械的理念なき抑制策」で対応できるとは思えません。規模、傾向からしてここは社会保障制度の組立とその内容に踏み込んだ手直しが不可欠だと思われます。 

(社会保険の理念を) 

 いうまでもなく、社会保障の中核をなすのが社会保険です。特に国民一般を対象にした医療、介護、年金が柱です。 

 これらの社会保険にはいうまでもなく制度を組み立てる「理念」があるはずです。また給付の受け手の利益の大小を超えて、それを賄う裏打ちとしての保険料をみんなで出し合ってどうしても必要なサービス・金品を手に入るように仕組みなのです。誤解を恐れずに言えばサービス・金品の共同購入の仕組みなのです。こうした原則にのっとりみんなが拠出する保険料を決め、給付内容を決めるのが社会保険なのです。 

 我が国の社会保険には、かなりの国庫負担が導入されています。特に、この20年ほどの間に高齢者医療制度の組立・再編、介護保険制度の実施などにより、給付費に占める国庫負担の割合が拡大しており、そのことが国の予算編成を大きく制約しているのが現実です。 

 しかし、改めて見てみると、社会保障給付費総額は120兆円を超え今や国の総予算の100兆円をはるかに超えている(下図参照)のです。社会保障経費の約60%は国民の拠出する保険料(事業主負担を含む)で賄われているのです。国民の保険料拠出増も考えねばなりません。社会保険の理念までさかのぼって論議を重ね、収支双方が成り立つ策を組み立てるしかありません。 

(課題は2点) 

 課題を整理すれば2つです。 

 第一は社会保険制度本来の論議を活発にして全員拠出・全員受給の仕組みの原点にのっとり医療、介護、年金の将来展望を切り開くこと。 

 第二は社会保険制度に対する国庫負担の拡大をどうするのか。成り行き任せにすれば消費税25%も架空の話ではない。 

 つまるところ、社会保険の改革なくして社会保障の改革なく、社会保障の改革なくして最大の課題である国の財政再建すなわち「現世代支出後世代負担」からの脱却なしといっていい。 

(社会保険の灯をつなごう) 

 話は大きくなったが、私たちには何の力もない。ただ、我が国のこれからのことを思うとき、後世代に付けを回さずに済む国づくりのために、最大のテーマである社会保障の改革を前に進める一助として社会保険」の理念を押し立て、要求型でなく、自立選択型の具体策を提示していきたい。 

 当面、社会保険の仕事にかかわった公務員有志、保険者団体の構成員、社会保険関係出版社員などが語らい、消えかかった社会保険の灯をともし続けようと集まった。 

 挑戦するテーマはあまりにも大きい。でも事始めは小さくていい。心ある人の自由な参加を待っています。 


国の一般会計に占める社会保障関係費等の推移・グラフ
社会保障関係費用が一般会計の最大支出になってきたことを示すグラフ

出典:資料・社会保障について(財務省 平成30411日)


国家予算と社会保障給費の推移グラフ
社会保障給付費が国家予算を超え、さらに差が開いていることを示すグラフ

出典:社会保険懇話会作成資料